Description
母が杖とともに帰ってきた。
杖を付く人の視線は、すたすた歩け、かがんだり座ったり身を翻して後方を見たり、何気ない姿勢ができる僕にはとても勉強になる。この身体が、どれだけありがたいか。
自分の身体に改めて感謝し、撫でさすり、愛撫し、いとおしみ、労わり、大丈夫か大丈夫かと声をかけ、「すまん!これからちょっときつい思いさせるよ!」飴と鞭を交互に使い分けつつ極寒と酷暑の難局を乗り切ろう。体があって、健康であるからこそできることだ。わたしのからだ、ありがとう。
北欧は福祉が進んでいるらしい。
それはどういうことからいわれているのか、実際はどうなのか。学びのチャンス。だが、寒さと暗さでそこまで気が回らないかもしれない。いやいや、ブロンドヘアーの美人ちゃんでそれどころじゃないかも!キャー!!
母はリハビリ期間。
これから助けが必要なときに僕がいなくなるのは申し訳ないが、もう旅立たなくてはならない。そうであるなら、よい旅をして帰るしかない。無事に帰って来るしかない。
杖を付く人の視線になると、やさしさが拾えるかもしれない。
杖を付く人に、気が付く人になろうと思う。