Exchange Money

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普段手にしないものを手にしたとき、人間は道を間違えてしまうことがあるらしい。
いつも貧乏暮らしであった野口英世は、都合してもらった留学費用の大金を、嬉しさのあまり一晩で使い果たしてしまったことがあるという。彼は大金を前に、使い方を間違えてしまったのだ。

先日「円」を「ユーロ」に換金した。
だが普段大金を使う機会に恵まれないため、野口博士3人（3000円）以上の一挙大量使用に僕は甚だ強い抵抗感を持っており、博士のように使い果たすという心配はしなくてもいいようだ。

それにしても結構な手数料であった。
その額は、野口博士が一晩で使い果たした留学全費用をはるかに上回るのである！
手数料が高額だったので（Fuck！）と陰気に心の中で思いつつ「キッ！」と鋭い庶民の視線をお上に投げかけると、ポニーテールの担当スズキさん（推定23歳島根県出身）がたいへん健やかかつ可愛らしかったので「Oh Thanks, I’m fine！」と不覚にもぬるい笑顔で受け答えをしてしまっていた。

手数料とは笑顔料なのだろうか。
僕は手数料に怒っていたことなども忘れ、胡乱（うろん）だマナコで彼女の出身などをエヘラエヘラ訊き、二度と逢うことはないだろうに「See you soon！」などとヒラリヒラリ手を振って換金所を後にしたのである。

僕の場合、どうも大金より婦女子の笑顔に弱いようだ。
普段手にしないものを手にしたとき道を間違えることがあるらしい。
要注意だ。