Description
I really respect children. I can’t imagine children’s imagination……
長い時間をかけて少年は想像の世界にいた。
待ちくたびれた付き添いのご婦人は少年と僕を残してどこかへと行ってしまった。それでよかった。どれだけ長く時間がかかってもいい。納得のいくまで、心ゆくまでやってみな。
少年の中にある大人や社会への気遣いを、できる限り取っ払ってやりたかった。
もどかしいほどゆっくりと、彼は砂を一つまみずつコップに入れた。そして時間をかけて青い砂を一粒ずつ、パラパラと箸を使って配置した。いや実際には無音の、それは僕という人間が久しく忘れている儚げで丁寧な所作だった。
これは貝なのだという一言で、僕は彼が海を作っているのを知った。コップの中に、波と青い貝が散乱した小さな浜辺ができ上がっていた。なんて素敵な海。小さくて底の知れない深い海。
目の前で初めて少年が笑顔を見せている。想像の世界を旅した者のみが持つ、それは確かな力に満ちている。
この2日間、僕は70人の子どもたちとキャンドルを作ってきた。その中で、大人が子どもの作品に口や手を出すのを何度も見た。私たちの常識やセンスで、もちろんよかれと思い「この方がよい」「こうした方がきれい」と助言をするのだが、それが子どもたちの独創性や閃きや感性を圧していることには気づいていないようだった。
仕事柄、子どもを「指導」する機会は多い。だが、常識と処世術が染み込み自らの心を見失った芯のないこの私が、子どもたちに助言できることなどそう多くはない。
子どもの中にある想像力を、私はまだ甘く見ている。
砂粒を貝に見立て、一粒ずつ配置していくゆとりと心のやわらかさを、私はどこかに置き忘れてしまっている。