Africa africa

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Why is she cry......? Liberia / 『DAYS JAPAN』

「ハーゥ、ムウゥ、ハウッ!」
はぁはぁ……なんだ、夢だったのか。
枕もとの水差しを手探りで当て、やおら半身をひねり渇いた喉に涼しい川ができる。よかった、日本にいる。うっすらと汗が額に浮かんでいた。

一枚の写真が記憶に張り付いている。
乾いた砂埃臭い空気。それに汗と体臭が混じり、人々が押し寄せる津波となって僕の方へやってくる。アフリカの、暴力的で乱雑で、なのに悲しさが付きまとうその世界は、ある雑誌で取り上げられていたケニアの部族間抗争を捉えた写真だった。

一人の男が矢を口に加え、血走った眼で向こうを睨んでいる。
男の小鼻はピクピクと小さな生物のように蠢いていて、何をそんなに猛っているのか、触れればビリビリ感電しそうだ。もし男と眼が合えば間違いなく僕の命に被害が及ぶだろう。何本もの汗がきれいな黒い肌を滑り落ち、乾ききった大地に吸い込まれていく。火を持った男がいる。ナタを持った男が投石を始めた。喚声が徐々に大きくなり命がたやすく削られる世界が現実となる。
夢の中で僕はそこにいた。
ああ、ここは一度訪れたことのあるケニアだとすぐに分かった。あのときも一度おそろしい目にあっている。あのときの空気だ。背筋に冷たいものが走る。
「パン、パンッ」
銃声が聞こえ出した。逃げるしかない。いち早く避難するしかない。なぜ、こんな危険な場所に来たのだろうと思う前に、夢の中でもがきながら目が覚めた。喉がカラカラだった。

無人の偵察機が空を飛び、ロボットたちが敵を探し殺しつくす戦闘が行われる時代に、一体古代の話か、矢じりをつけた弓矢やナタで闘う人々がいるということにとても衝撃を受けた。何年も前に見たはずなのに、とりわけその男の眼が、いまだに僕を捕らえて離さない。
違う世界といえばそれまでだが、なぜアフリカはこれほどまでの重荷を背負わなければならないのだろうか。
ページを繰ると、ケニアだけじゃない、ソマリアもウガンダもシエラレオネもニジェールも、アフリカ全体に負の現実が散在する。
僕はどれだけ知っているだろうか。どれだけ知らないだろうか。
男の目が僕に何かを問うていた。

この旅は、やはりというか、この眼を通して世界を知るための旅なのだ。僕がアフリカに足を着ける一年後、情勢はどう変化しているのか。その準備のための勉強であり予備知識でありイメージトレーニングなのだが……

あぁ秋の夜長なのだ、こわい夢は見たくない。
どうせ見るならロマンティックな夢がいい。
だから北欧のイメトレに切り替える。
キーワードは「美人、カワイコ、アツい夜」なんていかがだろう。

「ハーゥ、ムフゥ、ウヒャヒャー!」
夢と旅はやっぱり気楽がいいのだけれど……

追記:上記の雑誌は『DAYS JAPAN』。僕にとって見なければならない現実が誌上にあります。みなさんも手にとって見てください。

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