2. なぜ旅をするのか - 限界への挑戦

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-50℃を下回る厳冬期のアラスカ、50℃を超えるアリゾナやチリの砂漠、風雪が吹き荒れる冬のアンデスやパタゴニアを走ってきました。いずれも厳しい自然条件です。次の計画では、厳冬期のヨーロッパ北極圏、酷暑のサハラ砂漠が舞台です。

自転車に乗って厳しい時期に厳しい場所を旅するのはなぜなのか。それは自分を知り、自分の可能性を拡げたいからです。
いのちの限界まで近づくことは通常の生活をしていると中々できません。自分が極限に近い(僕はまだ極限という状況は体験していません。極限は自分が生と死の境目にいる状態だと考えるからです)環境でどこまで力を発揮できるか。思ったよりも動けるか、予想以上に弱いのか。極限に近づくと、突如、鉄の扉が行く手を遮るように自分の限界が目の前に現われます。なかなか見ることのできない限界の扉です。

僕という人間はとてもあやふやでどんな輪郭をしているのか分かりません。「ここまでなら耐えられるけど、ここからはダメだ!」いのちに緊張感が走るような、そんな環境に身を置きたいのは、自分の限界がどこにあるのかを知りたいからです。そして一旦は退いても、そこが分かっていれば次は工夫と訓練次第でもう少し限界を拡げられる、少なくともその可能性が生まれるからです。

昨今、移動やスポーツとして自転車に親しむ自転車愛好家、サイクリストは年々増加傾向にあり、今後もますます増えていくだろうといわれています。しかしながら海外を自転車で旅する人間になると格段に少なくなります。
日本アドベンチャーサイクリストクラブ(JACC)の資料に寄れば、日本人による世界一周完走者はいまだ100人に達しておりません。ことに厳冬期アラスカ・カナダでの-50℃を下回る地での走行となると、日本はもとより世界でもあまり例を見ないでしょう。それほど極寒地での自転車走行は困難が多いからです(例えば、極点到達に犬ぞり、徒歩、スノーモービルやモーターバイクは使われているが、自転車を使用しての到達者は皆無)。けれども僕はそういう点にこそ限界を超える道筋があると考えます。そこを避けるのであれば、限界を超えて更なる高みに行くことはできないでしょう。

行動者・表現者を目指す者としては、旅の技術や生き抜くための知識とノウハウのレベルアップを目指すのは命題です。だからこそ、より難易度の高い場所と季節を求めて行動をしますが、極寒、酷暑、高所地などの困難な大自然に挑むだけではなく、そこに人間の歴史や文化、生活の営み、様々な生き方をこの眼で見、聴き、嗅ぎ、味わい、触って実際に体感するという経験を加えることこそ、人との距離が希薄になりがちな現代における行動者・表現者としてやらねばならないことです。

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